アスベスト(石綿)は、その危険性から解体工事時には厳格な処理と手続きが求められます。日本では、アスベスト含有建材の種類や使用状況に応じてレベルが設定されており、それぞれに対応した処理方法と手続きが定められています。
1. アスベストのレベル分類
アスベストの飛散性や含有率に基づき、以下の3つのレベルに分類されます。
- レベル1(高濃度・飛散性アスベスト)
- 吹付けアスベスト
- 吹付けロックウール(アスベスト含有)
- レベル2(中濃度・飛散性アスベスト)
- アスベスト含有断熱材、保温材、耐火被覆材
- レベル3(低濃度・非飛散性アスベスト)
- アスベスト含有成形板(スレート、ボードなど)
2. レベル別の処理方法と手続き
2.1 レベル1:高濃度・飛散性アスベスト
2.1.1 処理方法
- 除去工法の採用
- 湿潤化:作業前にアスベストを十分に湿らせ、飛散を防止。
- 負圧隔離:作業エリアを密閉し、負圧機(集じん機)で空気を吸引して飛散を防止。
- 密閉作業:エリア全体をビニールシートで密閉。
- 作業者の保護
- 防護服・防じんマスク(呼吸用保護具)の着用:国家検定合格品を使用。
- 個人被ばく測定:作業者のばく露濃度を測定し、記録。
2.1.2 手続き
- 事前調査の実施
- 専門業者による調査:アスベストの有無、種類、量を確認。
- 調査結果の記録・保存:3年間保存。
- 計画届の提出
- 労働基準監督署への届出:作業開始の14日前までに「石綿作業計画届」を提出。
- 近隣住民への周知
- 説明会の開催:工事内容や安全対策を説明。
- 情報提供:書面や掲示板での告知。
- 産業廃棄物の適正処理
- 特別管理産業廃棄物として処理:専用の処理施設へ搬出。
- マニフェストの交付・保存:5年間保存。
2.2 レベル2:中濃度・飛散性アスベスト
2.2.1 処理方法
- 除去・封じ込め・囲い込み工法の検討
- 除去工法:レベル1と同様に湿潤化や密閉を行い、アスベストを除去。
- 封じ込め工法:アスベストを特殊なコーティング材で封じ込め。
- 囲い込み工法:構造物でアスベストを囲み、飛散を防止。
- 作業者の保護
- 防護具の着用:適切な防じんマスクと防護服を使用。
2.2.2 手続き
- 事前調査の実施
- 専門業者による調査と記録。
- 計画届の提出
- 労働基準監督署への届出:作業開始の14日前までに提出。
- 周知・掲示
- 作業場所の明示:警告標識や掲示板の設置。
- 廃棄物の処理
- 特別管理産業廃棄物として処理。
- マニフェストの管理。
2.3 レベル3:低濃度・非飛散性アスベスト
2.3.1 処理方法
- 通常の解体手法での取り扱い
- 破砕や切断の最小化:アスベスト含有建材をできるだけそのままの形で撤去。
- 湿潤化の実施:必要に応じて散水し、粉じんの発生を抑制。
- 作業者の保護
- 簡易な防じんマスクの着用:使い捨て式防じんマスクなど。
2.3.2 手続き
- 事前調査の実施
- アスベスト含有建材の有無を確認。
- 計画届の提出
- 不要(ただし、自治体によっては届出が必要な場合あり)。
- 廃棄物の処理
- 産業廃棄物として適正に処理。
- マニフェストの管理。
3. 共通の手続きと注意点
3.1 事前調査の重要性
- 建築物石綿含有建材調査者による調査が義務付けられています。
- 報告義務:調査結果を元請業者や発注者に報告。
3.2 作業計画の策定
- 作業手順書の作成:安全な作業手順を明文化。
- 緊急時対応策:アスベストの飛散事故時の対応方法を明記。
3.3 作業員の教育
- 特別教育の実施:アスベスト取扱い作業従事者への教育が必要。
- 健康診断の実施:定期的な健康診断と記録の保存。
3.4 環境への配慮
- 飛散防止対策:周辺環境への影響を最小限に抑える。
- 排水管理:湿潤化で使用した水の適切な処理。
4. 関連法令とガイドライン
- 労働安全衛生法
- 石綿障害予防規則(石綿則)
- 大気汚染防止法
- 特定粉じん排出等作業の規制
- 建築物石綿含有建材調査に関する省令
- 産業廃棄物処理法
5. 注意事項と最新情報の確認
- 法令の遵守:アスベストに関する法令は改正されることがあります。最新の情報を常に確認してください。
- 専門業者への依頼:アスベストの処理は高い専門性が求められます。資格を有する専門業者に依頼してください。
- 地域の条例・規制:自治体ごとに追加の規制や手続きがある場合があります。
まとめ
アスベストの解体作業は、その危険性から厳格な処理と手続きが求められます。レベルに応じた適切な処理方法と手続きを行うことで、作業者や周辺環境へのリスクを最小限に抑えることが可能です。法令遵守と安全対策を徹底し、専門的な知識と技術を持つ業者に依頼することが重要です。